子育て真最中のママ!育児疲れやストレスが溜まったりはしていませんか。これから赤ちゃんが欲しいと考えているママ!妊娠や出産、子育てについて不安が先立ってはいませんか。そんなママたちに、妊娠、出産、子育てについて、正しい理解を深めていただけるよう本特集を組みました。お話をうかがったのは、奈良県立医科大学 産婦人科学の小林先生です。
子どもが少なくなっていますね。女性の社会進出や高学歴化により結婚が遅くなったり、男性、女性共に未婚率が高くなってきたことも要因のひとつです。また核家族化の進行や近所との付き合いの減少で、子育てに協力してもらえる環境も減っていますね。このような社会変化から少子化が語られるケースは多いのですが、出産の減少によって女性特有の病気が増加していることに気づいてほしいと思います。
戦前の日本人女性は初潮の平均年齢が約15歳でした。そして18歳位で結婚して子どもを7〜8人ほど産むというのが、一般的だったのです。今では考えられないほどの子沢山だったわけですね。そして生理は閉経までの間に50回程度しかなかったそうです。
しかし現代の女性は11歳位で初潮を迎えますが、出産する子どもの数は統計上では1.5人に達しません。そして51歳あたりに閉経となります。ご存知のように妊娠中や出産後の授乳期には生理がありません。しかし閉経までの出産回数が2回に満たない現代の日本女性では、約450回もの生理があることになります。
生理の度に分泌されるエストロゲンというホルモンがあります。このエストロゲンが、子宮筋腫、子宮内膜症、そして乳がんや子宮体がんの発症リスク増加の原因となっているのです。つまり子どもを産まない女性が増えると、女性特有の病気も増えるということになるわけですね。
冒頭にお話ししましたように、女性の社会進出をはじめとする要因により、現代では結婚や出産の機会が減っていますが、これをなんとか増やしていかなければなりません。そのためには小学生のころから成長に合わせた身体とこころの教育や性教育を実施し、結婚、妊娠、出産、育児についての正しい理解を深める環境を作らねばなりません。もちろん、安心して出産、子育てできる環境作りが根本的な課題となっていますね。 何と言っても、子どもは社会の宝ですから。
産婦人科医として診療を続ける毎日ですが、以前に比べ、痩せたお母さんが多くなってきました。近頃の過度のダイエットブームの影響や、痩せたモデル体型がもてはやされているせいかもしれません。しかしこの痩せ体型は妊娠には、良い影響を及ぼしません。
「小さく産んで、大きく育てる」と言われたこともあります。皆さんもお聞きになったことがあることでしょう。痩せたお母さんから産まれる赤ちゃんは2500グラム以下の低出生体重児が多いことはデータ上でも明らかです。そして小さく生まれた赤ちゃんは、より栄養を取り込もうとしてメタボ予備軍になりやすいのです。これを倹約遺伝子(肥満遺伝子)と言い、何代にも渡って受け継がれてしまいます。
私たちの病院でも今では妊婦さんの体重に応じて妊娠中の体重増加管理を行っています。たとえば、痩せている妊婦さんなら10kg〜12kgの体重増はOKです。また標準体重の妊婦さんなら7kg〜10kg、太っている妊婦さんなら5kg〜7kgまでというように、個別指導を行っています。単に太ってはダメなのではなく、むしろ痩せすぎの妊婦さんが問題なのです。妊娠する前に標準体重に戻すことも重要な準備のひとつです。小さく産んだらメタボに育つかもですね(笑)
妊娠がわかってから注意をすることの一つに、水分補給があります。特に妊娠初期では水分補給が大切です。つわりがひどくなり、水分が取れなくなってくると、血栓症の危険が増してきます。特に夏場は要注意。こまめに水分をとりましょう。
中期以降では早産防止に努めなければなりません。未熟児すなわち低出生体重児はさまざまなリスクを負うことになるからです。そのためには定期の妊婦健診で尿、体重、血圧検査をきちんと行うことが大切です。
今、奈良医大産婦人科では「IT腹帯」と称して、腹帯に取り付けるモニターで、妊婦さんのお腹の具合を24時間体制で「みまもる」取り組みが行われようとしています。また、次のような実証研究も行う予定です。妊娠したら配布される母子手帳はスマホを利用した当科独自の「電子母子手帳」になっています。このスマホアプリ「電子母子手帳」は妊娠期間中のさまざまな情報を伝えるだけではなく、妊婦さんからの悩みや訴えをコーディネーターが受け取り、適切なアドバイスを行なう方式が導入されています。
奈良医大産婦人科における年間約1000件の出産のうち、全くの正常分娩は200件に過ぎません。残り800件のリスク分娩の半数が帝王切開です。妊婦さんや赤ちゃんに問題があることがわかっている出産のほか、妊婦さんのこころの問題などにも対応しています。
当科には昨年10月新しく「母と子のビル」が完成しました。
NICU、産科病棟、そして助産師主導のバースセンターや小児センターを兼ね備えています。
当科では出産後のお母さんをねぎらい、心穏やかに過ごしていただくため、そして楽しい子育ての門出をお祝いするという思いをこめて、退院時にはエステとお祝膳のプレゼントを用意しています。
核家族化や近所付き合いの希薄化などにより、出産や子育てに対して一人で悩むお母さんが増えています。育児放棄や乳幼児虐待、ネグレクトなどの問題も少なからず起こっています。
奈良県各市町村では、産後ケアを行い、子育てを地域のコミュニティで支援していこうという取り組みが行われつつあります。出産後、氾濫する情報に右往左往しがちなお母さんを支える包容力あるコミュニティを作っていくことは大切なことですね。子育てを「みまもる」ことができる地域のコミュニティが増えればうれしいですね。
またわれわれ医療者側からも正しい情報を発信提供していけるように努めたいと思います。
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