白い歯が輝く笑顔は、その人の印象を決める重要な要素です。小さな頃からのケアをする習慣をつけておくと、大人になってからも美しい口元を保つことが当たり前になり、健康寿命も延ばします。子育ての中で気を付けておきたい歯と口腔のケアについて奈良県立医科大学の桐田先生にお話を伺いました。
保護者による仕上げ磨きが虫歯やお口の病気を発見する第一歩
口元を美しく保つことは、全身の健康につながり、健康寿命を延ばすことに寄与します。耳にすることの多い歯周病は、お口の中の菌によって妊娠中のお母さんが早産になることや、高齢者においては心臓に影響を及ぼして動脈硬化や肺炎、糖尿病の悪化などを引き起こすことが知られています。子育てが忙しい保護者の方は歯磨きが不十分になりがちで歯肉炎が慢性化して歯周病になるケースも多く、注意が必要です。そして、保護者が歯やお口を大切にする姿を見せることは、子どもにもよい影響を与え、歯だけでなく口腔を大切にする気持ちを育てることにつながります。
子どもの歯と口腔のケアは毎日の歯磨きを習慣にすることから始まります。おやつは時間を決めて食べ、その後には必ずブラッシングをするようにしましょう。子どもの頃から食事と歯磨きをセットにして習慣化することが大切です。特に寝る前はしっかり行ってください。日中は唾液によってある程度きれいになるのですが、寝ている間は唾液の量が少なくなり、菌の繁殖が進みやすいからです。そして、歯磨き習慣は子どもに任せるのではなく、親も関わるようにしてください。小さな子どもが自分で隅々まで歯磨きをすることは難しく、保護者による仕上げ磨きが必要です。生え変わるからといって乳歯の虫歯を見過ごさないように、上あごの奥歯など歯ブラシが届きにくいところは、保護者がしっかりと仕上げ磨きを行いましょう。乳歯が虫歯になって早期に抜けてしまうと、隙間ができ、歯が動き、永久歯の生える場所がなくなってしまうようなケースもあります。永久歯の歯並びを美しくするためにも乳歯をしっかりと育て、永久歯と入れ替わることが大切です。また、仕上げ磨きの時には虫歯のチェックだけでなく、口の中全体をしっかりと見るようにしてください。口の中には虫歯以外の病気もたくさんあり、普段から見ていると小さな変化にも気づくことができるようになります。例えば、口内炎や舌小帯と呼ばれる舌の裏の筋が短いなどの異常や唇裂、口蓋裂などの先天的な異常、唾液腺が詰まって腫れていたり、嚢胞のようなできものがあったりなど、日頃の観察で病変を見つけることができるのは保護者なのです。
悪い歯並びは顎関節症や肩こり、頭痛の原因になることも
乳歯の段階では歯並びについてはよほどの場合を除き、それほど心配はしなくてもいいのですが、生え変わりの段階であごの発育が悪く、永久歯が十分に並びきらないことがわかることがあります。また、永久歯に生え変わり始めた時は少し歪んで生える場合もあり、全体が生えそろっていく中で、歯が動いて綺麗な歯並びへと治まっていくこともありますので、定期的な検診が安心へとつながります。歯並びについて不安を感じる場合は、専門医で見てもらうことが確実だと思います。学会のホームページでは、矯正歯科の専門医を調べることができます。普段のメンテナンスはかかりつけ医で十分だと思いますが、矯正が必要かどうかという判断の時は、いろいろな考え方を知るためにもセカンドオピニオンもいいと思います。
美しい歯並びは、見た人に良い印象を与えるだけでなく、健康にも関わっています。歯並びが悪くて噛み合わせが悪くなると、あごに負担がかかり、顎関節症を引き起こすことがあります。あごが痛む、口が開かない、あごを動かすと音がするなどの症状が出て、食べ物を噛むことができなくなる場合もあります。肩こりや頭痛などの症状につながることもあります。他にも歯並びの悪さによってあごへの負担が大きくなるものに、歯ぎしりがあります。噛み合わせが悪い人の歯ぎしりは、噛み合っているところへの負担が大きく、ダメージも大きいです。マウスピース等で歯ぎしりを軽減し、噛み合わせを安定させあごの関節への負担を減らすようにすることが必要となる場合もあります。
日常生活の中で、子どもの口内チェックは保護者の役目です。さらに、半年に一度くらいを目安に定期健診で早めに対応しておくと、お口の病気の発見が遅れたり大がかりな矯正などをしなくていい可能性を増やしてくれます。乳歯が生えそろう2歳から2歳半ぐらいにかかりつけ医をつくっておくと、治療が必要になった時にも子どもが怖がらずに処置をすすめることができて安心です。
