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知っておきたい女性の病気

成人女性の3人に1人が持っているといわれる身近な病気

子宮筋腫

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月経量、月経痛が危険サイン筋腫ができる場所によって特徴や症状が異なることも

子宮筋腫は、子宮を構成する平滑筋と呼ばれる筋肉のこぶのような塊です。筋腫は主に次のような種類があり、できる場所によって症状や治療法が異なります。

「筋層内筋腫」(図①)は子宮の内側にでき、子宮筋腫の7割がこのタイプ。筋腫が小さいうちはほとんど症状がなく、大きくなるにつれ、月経量が増えたり、月経痛を感じる人がいます。

子宮全体を覆っている膜の下にできるのが「漿膜下(しょうまくか)筋腫」(図②)。こちらも自覚症状はほとんどみられませんが、筋腫が大きくなると、頻尿、便秘などが起こることも。さらに子宮から飛び出すように成長し、細い茎のように子宮とつながっている「有茎(ゆうけい)漿膜下筋腫」( 図③ )になると、茎の部分がねじれたときに、激痛が起こります。

「粘膜下(ねんまくか)筋腫」(図④)は子宮内膜(粘膜)下にでき、内腔に向かってできる筋腫。さらに「粘膜下筋腫」に茎がある「有茎粘膜下筋腫」(図⑤)や、茎が伸びて膣内に飛び出す「筋腫分娩(ぶんべん)」(図⑥)もあります。いずれも貧血を起こしやすく、不妊や流産の原因になることも。

以上の筋腫以外にも、子宮頸部(けいぶ)にできる「頸部筋腫」(図⑦)があり、分娩時の妨げになりやすいといわれます。

子宮筋腫の原因に、卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステンが挙げられます。特にエストロゲンの分泌が盛んな30〜40代に、筋腫が発見されることが多いようです。

子宮筋腫は良性の腫瘍で無症状なことが特徴。しかし筋腫の大きさやできる場所、時期により、自覚症状があることも。

最も多いのが過多月経で「月経時の出血量が多い」「レバーのような血の塊が出る」「10日以上月経が続く」などが主な症状です。そのほかに月経痛、吐き気、頭痛、腰痛などを引き起こす月経困難症、貧血、便秘、腹部の膨満感、頻尿などが挙げられます。

以上のような自覚症状があったり、婦人科検診などで子宮筋腫が発見された場合は、専門医にきちんと診察してもらいましょう。

診察では、問診、内診、超音波検査が行われます。内診では医師が膣内に指を入れ、子宮や卵巣の状態を調べ、筋腫の有無や大きさなどを確認。さらに、超音波検査で、子宮や卵巣を画像でもチェックします。

筋腫以外の病気の疑いがある場合は、MRI検査、子宮鏡検査、血液検査などの精密検査を行います。不妊症や、子宮内膜にできる悪性腫瘍(子宮がん)の検査を行うこともあります。

子宮筋腫の治療法は、経過観察、薬物療法、手術の3種類があります。

治療法は経過観察、薬物療法、手術の3種類専門医で定期的に診察を

子宮筋腫は命にかかわる病気ではないため、早急に治療が必要とされることはありません。自覚症状がなかったり、症状が軽い場合は経過観察が一般的です。専門医に定期的に診察してもらい、経過をみましょう。

一方で日常に支障を来すほどのつらい症状がある場合は、薬物療法を行います。貧血を治療する造血剤や、月経痛を和らげる鎮痛剤、過多月経を防ぐ止血剤などがあり、最近では低容量ピルを用いて、女性ホルモンのバランスを整える治療もあります。

また子宮筋腫の発育を阻止するために、卵巣を刺激するホルモンの分泌を下げて卵巣の働きを抑える薬「GnRH(ジー・エヌ・アール・エイチ)アゴニスト」を用いるケースも。ただし薬物療法は、人によっては効果が期待できなかったり、薬の副作用が出る場合もあるので注意が必要です。

筋腫を取り除く手術は子宮を温存する「筋腫核出術」と、子宮全体を摘出する「子宮全摘術」があり、後者は腹式と膣式の全摘術があり腹腔鏡手術が行われることもあります。閉経までの期間、妊娠の希望、日常生活や健康への障害の程度などを考慮して手術に臨みましょう。

子宮筋腫Q&A