奈良医療ガイド なら元気NAVIについて

知っておきたい女性の病気

目まい、だるさ、冷え、頭痛、息切れ…体のサインを見逃さないで

鉄欠乏性貧血

原因はヘモグロビン不足放っておくと循環障害や潰瘍に

「貧血」とは、血液中の赤血球、または赤血球中のヘモグロビン(血色素)の総量が少なくなった状態のことをいいます。数量自体が少ない場合と、数は多くても赤血球の直径が小さい場合があるので、数と大きさを含めた量で診断されます。

貧血の中でも特に女性に多いのは「鉄欠乏性貧血」。これは、ヘモグロビンを生成する材料である鉄が不足したことによる症状です。

急に立ち上がったときなどに起こるふらつきは、「脳貧血」といわれ、脳内にあった血液が重力により下がったときに起こります。脳内の赤血球濃度が急激に少なくなったことによるもので、「鉄欠乏性貧血」とは区別されています。

ヘモグロビンには酸素を全身へ運ぶという大切な役割があります。

赤血球は骨髄で作られ、血液中で約120日間活動した後、肝臓やひ臓で壊されますが、赤血球の生成が悪くなると、十分な酸素が行きわたらず、さまざまな症状が現れます。

酸素不足による症状としては、目まい、だるさ、頭痛、集中力の低下などが挙げられます。また、酸素不足を解消しようとする代償症状も並行して現れてきます。動悸(どうき)、不整脈、息切れ、白髪、リンパ節の腫れなどがこれに当たります。これらの症状は、徐々に起こるので、「少し体調が悪いだけ」と見逃してしまうことがあります。しかし放置していると、つめの変形や循環障害、潰瘍(かいよう)などに進行してしまうことも。

ページのチェックリストで自己診断をし、当てはまるものがあれば、一度内科医を訪ねてください。

事故やけが生理過多による出血も鉄欠乏性貧血の理由に

イメージ貧血を引き起こす原因は、大きく分けて3つあります。まず1つに「赤血球の生成が悪い」ということ。偏りがちな食事をしていたり、ダイエットなどにより栄養が不足すると、赤血球の材料となる鉄が少なくなります。2つ目は、何らかの外因で作られた赤血球が溶けてしまう場合。そして、3つ目は「出血」によるものです。事故やけがなどによる出血もありますが、女性の場合、生理過多に気を付けなければいけません。生理により血液が失われると、同時に鉄も失われます。

鉄欠乏性貧血が女性に多いといわれるのは、生理が大きく関係しているためで、閉経前までの女性に症状がみられます。子宮筋腫や内膜症など女性特有の疾患が背景に潜んでいることや胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの消化器系の疾患、痔(ぢ)などによる出血で貧血を引き起こしている場合もあります。これらの病気の疑いを含めて検査をすることが必要です。

早めの受診と食生活の改善が重要外食が多い人や無理なダイエットは要注意

鉄不足のセルフチェック

○診断と治療法なダイエットは要注意

貧血は、血液検査で赤血球数やヘモグロビン量を調べると簡単に分かります。女性は身近にある病気として定期的な検診をおすすめします。検査でヘモグロビン量が少ないとわかった場合、さらに鉄量を調べ、その値が少ないと「鉄欠乏性貧血」と診断されます。

鉄量が少ないと診断されたときの一般的な治療は、鉄剤の経口薬が用いられます。しかし鉄は体内に吸収されにくいという特徴があります。そこで、赤血球の生成を助ける葉酸やビタミンB12などが用いられる場合があります。

また、忙しくて食生活が不規則な人は、コンビニエンスストアなどで入手しやすくなったサプリメントをうまく取り入れるのも対策の一つ。最近では鉄を添加した飲料などもあります。

たいていの場合、投薬で解消されますが、鉄剤は胃への負担が大きいため、軽い腹痛や吐き気、食欲低下、便秘を起こす人も少なくありません。そうなる前にも、日ごろから食生活には気をつけ、鉄含有量の多い食べ物を摂取する必要があります。 

○日ごろからの予防法は?

1日の鉄摂取目安量は成人男性7・5㎎、成人女性では10・5㎎です。鉄分は体内で作り出すことができないので、食べ物から摂取するほか方法はありません。1ccの血液が失われると、0・5㎎と簡単に鉄が失われてしまいます。鉄不足にならないためには、やはりバランスの良い食事を心がけることが大切です。

外食が多い人や、食生活が不規則な人、無理なダイエットなどで偏食をすると、容易に鉄不足に陥ります。また、妊娠、授乳期も鉄分の需要が高まるので要注意です。

鉄含有量の多い食べ物特に女性は、毎月の生理で鉄不足になりやすいことを念頭におき、積極的に鉄分の多い食品を摂取することが必要です。

レバー、緑黄色野菜、海藻類などは、鉄分や良質の赤血球を生成する手助けになる葉酸が豊富に含まれています。下記に挙げた食品は鉄分や葉酸が多いといわれている食材です。

「貧血ならレバーを」というのが一般的ですが、苦手な人は、赤身の肉がおすすめ。ほか、切干し大根やきくらげ、干しシイタケなどは、生のものよりミネラル成分が高いとされています。

また、食材を鉄製の鍋やフライパンを調理器具として用いると、食品に鉄成分が吸収され摂取量が高まります。

さらに、鉄の吸収を助けるために、良質のたんぱく質(肉、魚、卵、大豆)や、野菜、果物のビタミンCを一緒に摂取することも大切です。これらをバランスよく食べることを心がけましょう。

鉄欠乏性貧血は誰にでも起こる病気です。しかしライフスタイルの見直しで改善されるものなので、この機会に一度振り返ってみてください。